2003.2.15
  背番号が持つ本来の意味を、探ってみましょう
 

さて、今日では「エースナンバー」はNo.10と言われることが多いですが、実は昔は、点取り屋(ゴールゲッター)こそが「エース」と考えられていました。2-3-5システムの図でも推察していただけるように、最前線(フォワード)の中央、すなわち「センターフォワード」(CF)が点取り屋になります。ですから、長らく「エース」とはNo.9であることが普通だったのです。

点取り屋を意味する背番号は元来No.10と思っておられる方も少なくないようですが、本来の点取り屋の背番号はNo.9ということです。私は、日本ではNo.9が少し軽視されているような気がします。国際的には、ゴールゲッターは今でもNo.9であることが多いはずです。

必ずしも点取り屋を「エース」とするのではなく、攻撃の中心選手、つまりゴールもするけれども、No.9や最前線(フォワード、トップの選手)を操って攻撃を形づくる、いわば「攻撃の核」となる選手を「エース」と考える傾向が出てきたのは、1970年代後半から80年代にかけての頃からではないでしょうか。


No.7は、主として右サイドを突破してチャンスメイクの役割をする「右ウイング」ということに、No.11は、主として左サイドを突破してチャンスメイクする「左ウイング」ということになります。


2-3-5システムにおいてNo.8とNo.10は、ちょっとわかりづらいかもしれませんが、それぞれに「右インサイド」とか「右インナー」、「左インサイド」とか「左インナー」と呼ばれていました。センターフォワード(No.9)よりも少し下がり目で、中盤よりも前で、攻撃陣の一角をなし、ゴールも狙うという役割です。No.8とNo.10とは、右サイド寄りと左サイド寄りの違いあるだけで、役割としては本来同じようなものであったと思われます。今日でも、どちらかというと右サイドのプレーを得意とする選手にNo.8が、どちらかというと左サイドのプレーを得意とする選手にNo.10が与えられることが多いはずです。


No.10は、今日では「攻撃の中心」ということで、多くの人々の注目の的です。「ゲームメイカー」とか言われて、「攻撃の核」となる選手です。しばしば話題になる「トップ下」というポジション・役割は、No.10であることが多いですね。

No.10がトップ(フォワード)よりも1列もしくは0.5列下がった位置で「攻撃の中心」の役割を果たすというのは、2-3-5システムを基本的に踏襲しているとも言えるのではないでしょうか。

左右の違いだけで同じような役割であったNo.8とNo.10とで、No.10の方が「攻撃の中心」という意味になってきたのは、2-3-5システムの当時から、No.10がNo.9とともにゴールも多くあげてきたことにあるように感じます。

主に中央から左サイド寄りをプレーエリアとしてきたNo.10がゴールを多くあげるには、1つの理由があります。それは、相手ゴールに対して左寄りをプレーエリアとした方が、右利きの選手にとっては、右足でも左足でもゴールを狙いやすいということです。

左足でシュートする場合は、相手ゴール左サイドから、やや角度がない所から左足シュートを放つことになりますが、右足でシュートする場合は、中に切れ込んきての右足シュートです。相手ゴールに対して角度がありますから、シュートの決定度はより高くなるわけです。

もちろん、左サイド寄りをプレーエリアとするには、左足のシュートも得意である必要があります。意外に思われる方もいらっしゃるでしょうが、利き足は右足でも、シュートの上手な選手は左足のシュートが得意なのです。軸足(右足)がしっかりするのと、利き足でないので余計な力みがなく、スムースに足を振り抜くことができるのでしょう。(私も、左足の方がシュートは得意でした。プレースキックはもちろん右足でキックしますが。)

そんな経緯もあって、また「サッカーの神様」と言われるペレが常に背負っていたということも相まって、さらにゴールだけでない攻撃そのものを形づくる役割の重要性がより強く認識されるようになって、No.10という背番号が、やがて「攻撃の中心」「ファンタジスタ」「エース」の代名詞となっていったのだと考えられます。

さらに今日では、チームの頭脳・プレイメイカー(攻撃だけでなくチーム全体の司令塔・演出家)は、どんどんその位置(ポジション)が下(後方)に移ってきています。フォワードでもない、トップ下でもない、もっと後ろの選手がNo.10をつけているチームも、既にしばしば見られます。今後は、No.10をどのような位置の選手が付けていくのか、関心を払っていくのも楽しいでしょう。


少しわかりづらい話になってしまったかもしれませんが、最も原初的なシステムである2-3-5システムに触れてみました。

この2-3-5システムが、やがて3-2-5になり、4-2-4になり、4-3-3になり、そして今日の4-4-2や3-5-2へと進化・変遷を遂げていったのです。そしてさらに、今日の4-4-2や3-5-2でも様々な変化形が登場してきています。4-5-1とか、4-2-3-1とか、4-3-2-1とか。あるいは、3-4-3とか、3-6-1とか、3-3-3-1とか、3-4-2-1とか。とにかく様々なバリエーションがあります。

今回紹介した2-3-5システムと、その中で背番号が持っていた本来の意味・役割について、少しだけ知っていただくことができれば、これからのサッカー観戦を、また一味違うものにしていただけるのではないでしょうか。


ところで、2-3-5システムでの試合を私はリアルタイムでは見たことはないです。幾らなんでも、そこまで年寄りではありませんので。 (了)

   
 

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