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パプリッシャーとしてのマルチメディアプロデューサーの確立をめざすMPUの活動
−出版産業におけるマルチメディアの現状と課題−(その2) |
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印刷・関連技術専門解説誌 印刷情報 1995年1月号:竹内 好 |
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■MPUの発足と活動
MPU(マルチメディア・プロデューサーズ・ユニオン)は,1993年初夏,わずか5〜6名の参加人数で活動の口火を切った。MPUが発足にあたってその活動目的として設定したのは次のテーマである。
(1)パブリッシャーサイドのプロデューサーの力量の自己育成
(2)マルチメディアタイトル企画の蓄積・相互助言
(3)タイトル開発における相互協力
(4)業務依託のできる優秀なデベロッパーの確保
(5)蓄積した企画実現のためのロビー活動
MPUは会社単位ではなくあくまで個人参加により,一プロデューサー同士として互いを尊重しあうことを基本理念としている。その意味からも「ユニオン」という名称を付加しているわけである。発足以来,基本的に隔月のペースで定例会を開催し,各回ごとにテーマを設定し,適宜講師によるレクチャーを依頼しながら模索と探究を行ってきた。
〔MPU定例会主要テーマ〕
●出版業界が抱える課題の抽出とマルチメディアに向かう必然性
●先行参入企業に学ぶケーススタディ
●リスクヘッジの具体的方法
●マーケティング方法
●マルチメディアにおけるプロデュース業務とは何か
●予算策定・制作費見積書の見方・プロダクションの選び方
●クロスプラットフォームによるタイトル開発
●流通サイドが欲しがるタイトルとは
●パネルディスカッション;CD-ROMタイトルその光と影
●マルチメディアタイトル共同ファイナンスプロジェクト
ごく小規模でスタートしたMPUだが徐々にメンバーの輪は広がり,94年11月には登録メンバーも約80名の規模となった。また,メンバー間によるジョイントプロジェクト,タイトル開発もいくつか実現し,MPUの活動スタイルも出来上がりつつある。
■MPU GRAND PRIX(MPU大賞)の選定と表彰
こうしてMPUとしての活動を継続していく中で,メンバーたちから互いの優れた活動を評価しあい,また励みにもしあえるような,そんな表彰制度もあっていいのではないか,という声が自然発生的に生まれてきた。
マルチメディアタイトルに対してはすでにいくつかの権威ある賞の選定と授与がなされているが,今後なお一層MPUメンバーが相互に助け合って活動の質とレベルを向上させていくためにも,MPUならではの視点と角度で,パブリッシャーサイドのプロデューサーとして評価し合える作品や活動を表彰することとした。第1回めの「MPU大賞」は,「MPU
GRAND PRIX'94」と銘打ち,MPUの姿勢にマッチすることを念頭に次の5つの賞を設定してみた。
●BEST PRODUCER OF THE YEAR
(最も顕著な活躍と実績を残したプロデューサー)
●BEST PUBLISHER OF THE YEAR
(質量とも最も顕著なタイトルリリース実績をあげ、かつマルチメディアタイトルのパブリッシングに多大な貢献を残したパブリッシャー)
●BEST PROJECT OF THE YEAR
(タイトルとしての質,完成度はもとより,プランニング・異業種ジョイント・有機的効果的な開発・パブリッシングに至るまで,高レベルのプロデュース能力を発揮したパブリッシャー)
●BEST ART OF THE YEAR
(斬新性に富んだ,挑戦的、創造的なプロダクトを展開したタイトルをプロデュースしたパブリッシャー)
●BEST CONTENTS OF THE YEAR
(所有する知的ソース,素材,長年にわたる蓄積を有効に活用し,社会的に有意義なタイトルをプロデュースしたパブリッシャー)
「BEST PRODUCER OF THE YEAR」は河村親弘氏(株式会社白夜書房)に,「BEST
PUBLISHER OF THE YEAR」はNECホームエレクトロニクスに贈られた。また「BEST
PROJECT OF THE YEAR」は,CD-ROMタイトル「The
Complete OZU」により東芝EMI,ボイジャージャパン,メディアクラフト,ビジュアルランゲージ,松竹の各社に,「BEST
ART OF THE YEAR」は,CD-ROMタイトル「Cellofania」によりトンキンハウスに,「BEST
CONTENTS OF THE YEAR」は,CD-ROMタイトル「キネマ旬報,シネマデータベース アメリカ編」によりNECホームエレクトロニクス,キネマ旬報社,SSコミュニケーションズの各社に贈られた。
1995年以降もなお一層,出版社をはじめとするパブリッシャーが自らタイトルビジネスを立ち上げ着実な成功を収めていけるように,またマルチメディアビジネスのさらなる拡大と発展に寄与できるように,MPUの活動を高めていきたいと考えている。
(おわり)
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