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ソフトが開くマルチメディア元年 −特集 マルチメディアって何だろう?(その2) |
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WANPAKU
KOZO OWNER'S PRESS 1994年1月号:竹内 好 |
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■ハードはファミリー構造に
今春に日本でも発売を予定されている松下の3DOについで、ソニーでもインタラクティブマルチプレーヤーの発売が予定されています。
規格がバラバラなCD-ROMを一網打尽にしたいというメーカー側の論理はわかりますが、しかし、ソフト側から言えば、これまでパソコンが作ってきた文化を台無しにして欲しくないと思います。現在3000タイトルはあるパソコンのソフトを無駄にして欲しくないですね。
例えば、今、形が見えはじめている3DOの場合でも、ソフト制作はマッキントッシュのオーサリングシステムでも作れると聞いてますが、実際のところどの程度の互換性がある設計なのかまだわかりません。
今回の松下、そしてソニーの参入が過去にあったVHS対ベータ戦争になるのならば、今、パソコンを土壌として折角育っているマルチメディア化の芽を無視して新しい戦いをするのではなく、同じ土壌でやって欲しいですね。
その点、アップル社のハード戦略はうまいと思います。
日本ではシャープから発売になる予定の個人用携帯情報端末(PDA)ニュートンは、マッキントッシュをキーステーションにしてビジネスマンの生活を大きく包み込んでいこうとするものです。ビジネスマンがオフィスで使っているパソコンと必ずリンケージがとれるものを開発していき、ゆくゆくは家庭やホビーにも応用できるように、マッキントッシュ・ファミリーを作っていくというグランドデザインが見えますね。今回発売されたニュートンは、今はまだ高級電子手帳という印象ですが、ソフトが次々に開発されれば、大変便利なものになる可能性があります。
家庭内に無理やりパソコンやマルチメディアプレーヤーを入れようとして失敗した、日本のコンピュータ・メーカーにも考えて貰いたいと思います。
■マルチメディア時代のソフトショップ
マルチメディアがもっと伸びていくためには、そのソフトを販売するショップの存在も大きなものです。例えばCD-ROMを買いたいと思ったときに、どこへいけばいいのか。東京であれば問題はないとしても、地方ではどうなるのでしょうか。つまりソフトショップの数が増えることが先決なのです。
そこでそれに該当する既存ショップを考えると、書店、CDレンタル店、ビデオレンタル店、そしてゲームショップが考えられます。これらが複合化していくことが、消費者にとっては一番分かりやすく便利なのかもしれません。
但し、その中で数は一番多いのでしょうけど、書店については現状のままでは難しいのではないかと考えます。細かく言えば、書店にソフトを置くということと、書店ルートでソフトを流すというのは違うと思います。
書店ルートとは、すなわち再販維持を前提とした取り次ぎのルートです。このルートでソフトを流しても、店主が梱包を解かなければそのまま返品になってしまいます。また、再販維持という仕切りも違ってきます。ですから私の考えとしては、書店ルートは期待
できないと思っています。
それを検証する意味では、ソニーが以前に出した電子ブックがいい例でしょう。電子ブックは書店ルートを使って、書店とソニーの家電ショップの二つで発売したのですが、販売実績の殆どは家電ショップがあげました。書店で電子ブックを買う人はいなかったわけです。町の小さな書店のレジの隅に、電子ブックが申し訳程度においてある、これじゃ売れるはずがない。
書店ルートが持つ問題点、そして書店主の意識改革などがなされないかぎり書店は複合ソフトショップにはならないと思います。
極論を言えば、現在のソフトショップを複合化したメディアストアが出現し、その新しいディストリビューターが流通を改革していくのが一番望ましいのではないでしょうか。
そういった意味で、今のソフトショップの役割は大きなものです。
マルチメディアを発展させるのは、実はハードの普及よりも、流通を含めてソフトを供給する側が主役になって進むべきなのではないでしょうか。その意味からもマルチメディア元年を開くのは、ソフトの力なのです。
(おわり)
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