「'91映像ソフトハイライト:インタラクティブ・ソフト時代の到来」講演録より〜
「 おばあちゃんの知恵袋」製作のコンセプト:
竹内 好


 まず、出版業界にとってマルチメディアとは何かということですが、本というメディアは歴史も長く、柔軟性に富んだ素晴らしいメディア・商品であると言えます。しかしながら、今日に至ってきて2つの課題があるように思います。1つは、本の出版で蓄積されてきたテキストデータ、写真、画をいかに電子メディアに乗せて行くかということです。2つめは、マルチメディアの創造の問題です。マルチメディアは新しい文化であり、新しい文明であると思っています。おそらく、出版業界の気分としては、1つめのことと2つめのこことは、若干レベルの違う課題ととらえていると思います。


 「おばあちゃんの知恵袋」は、「おばあちゃん」ならではの、衣食住に関するいろいろな知恵さ歳時記をまとめたものです。本でもいろいろと出版されていますが、これをデータベース的にまとめただけでは面白くないので、電源を付けっぱなしでも楽しんでもらえるようにしました。したがって、タイトルにオープニングはなく、おばあちゃんが勝手に知恵を話し出します。人形で造った「おばあちゃん」を実際に登場させて、その「おばあちゃん」が喋ってくれるというスタイルです。我々はこの「おばあちゃん」を「バーチャルおばあちゃん」と呼んでいます。「バーチャルおばあちゃん」は、今の季節に合わせたお話をしてくれます。収録している知恵の数は100以上なのですが、それをコンピュータ内蔵カレンダーと同期させているわけです。


 「おばあちゃん」ですから、喋ってばかりいると疲れてしまいますので、時々「お話しし過ぎたかね。ちょっと一休みするね」と言って休んだり、「ちょっと出かけてくるからね」と言って出かけてしまったりします。
 前に一度聞いた話を、また喋ってくれちゃうかもしれません。そんな時は、「おばあちゃん、その話はもう聞いたよ」というボタンをクリックします。そうすると、「そうだったかね。じゃ、こんな話はどうかね」とか「もう忘れたかと思って話してるんじゃよ」なんて答えてくれます。
 「困った時のおばあちゃん頼み」というメニューも用意してありますので、知りたい知恵やウンチクを検索して調べることもできます。

(1992年3月18日)